陰陽説 五行説 相生・相剋説
陰陽道の発祥については、未だ不確かです。
おおよそですが、起源はとても古く、紀元前二千年の中国にまでさかのぼります。
史実からみれば、紀元前千六百年頃の殷墟から干支(カンシ)が刻まれた甲骨文字が出土しており、この頃には既に、陰陽道的思想によって占ったり政治や時事を行っていたと考えられています。
干支(カンシ)は(エト)とも読みますが私たちが知っている十二支(子・丑・寅……)とは違います。
周王朝、紀元前千百年頃には、このような研究をまとめ、本にした「易経」というものが編纂されています。
その後、様々な易、統計学が発達、発展、又淘汰され、その理論が洗練されていきました。

中国戦国時代(紀元前七百七十年〜前二百二十一年)に入り、この頃の思想家によって「相剋説」が打ち出されました。
当時、敵を倒すためのノウハウでした。
そして前漢時代(紀元前二百二年〜前八年)には、儒家によって「相生説」がとなえられました。
対してこちらは、共存共栄のノウハウです。
これらは、陰陽道の基本理論としてその後発展してまいります。

隋(五百八十九年〜六百十八年)の時代にこれまでの陰陽道の考え方を集大成し理論的に完成させた「五行大儀」(陰陽道基本文献)もこの時代に作られたとされています。
「易経」も「五行大儀」も現代語訳があります。
興味のある方は是非読んでみて下さい。
日本では、奈良の遺跡から、陰陽五行の四色の勾玉(マガタマ)が出土しております。
このことにより、弥生人が古代中国の陰陽五行説の影響を受けていたと推察されます。
稲作が伝えられたときに、農業に不可欠な「暦」が同時に輸入されました。
その後、文献的に確認されるのは「日本書紀」(七百二十年)の記述に朝鮮半島を経由して伝来したことが伝えられています。
まだ、地球が丸いことも知らない時代に、はるばる海を越えてやってきた人たちって、どんな人なんでしょう?
天武朝の頃になると、律令体制の整備とともに、陰陽道は国家体制に組み込まれ、厳重な管理下におかれ「陰陽寮」という役所が置かれます。

その陰陽寮という機関が中心となり、暦、天文、年間行事、吉凶を判別する専門機関として、陰陽道の実践や細分化・再体系化が進みました。
当時は、陰陽寮に携わる者意外がこの道を学ぶこと、技能を用いることを固く禁じ、衆人から陰陽道を隔離しました。
よって当事者の陰陽師達は、時の政治権力者の支配体制に取り込まれ、時の権力者の意向に沿うかたちで、この頃から様々な占法が展開されています。
陰陽師は役人でした。位は高くないけれど国家の中枢を担うエリート官僚でした。
当時は陰陽師の他に、呪禁師、宿曜師等、異界を語る者が多く存在し、それらがそれぞれに影響しあうことにより、異形の世界が頻繁に乱用される独特な社会が形成されていきました。
今日の陰陽道のイメージは、この時代の背景が多分に含まれています。
あの有名な安倍晴明もエリート官僚だったのでしょうか?
鎌倉時代には、歴代の将軍は京より陰陽師を呼び、政権の安定を図る事柄を陰陽師に担わせました。
陰陽道は政権を守護し、存続させる為の霊的な存在としての役割を果たすようになります。
それ以降の陰陽道については、民間宗教的な傾向となるものや、社会体制を守護するための祭祀を行うもの等、様々な分派を繰り返し、今日に至っています。
また、各時代を通じて、神道、仏教等様々な宗教とも融合を繰り返しており、特に陰陽道の中に存在する呪術、儀式は、道教の影響を多分に含んでいます。
よって、これらの呪術や融合的宗教概念を廃し、理論構成したものが、陰陽道の哲学ということになります。
科学の発達していない時代の人たちにとって、未来を知ることは大きな「力」だったんでしょう。
それが政治と占いがリンクしていく最大の要素なのかも知れません。
陰陽説は、万物を二元論的に物事を区別する概念で、能動的、攻撃的、前進的状態に傾いているものを「陽」とし、受動的、防衛的、後進的状態に傾いているものを「陰」とし、これらが融合し、また循環することで万物の生成、消滅といった変化が発生するという説です。

古代中国では、天地の未だ明らかでない時に大始があり、大始は宇宙を生じ、その宇宙から気が生じ、その気の清なるものが天(陽)となり、濁たるものが地(陰)になり、その天の気と地の気が上昇し、又下降し、流動して万物を生じるのだと考えられていました。
このニ気の消長と循環によって万物の状態や物事を理解し、その統計に基づいて未来の予想を行うことに発展しました。
また、陰と陽のニ気が、森羅万象の変化に関するものならば、当然人間の行動や社会の動向にも影響を及ぼす訳であり、自然、人間、社会といった諸現象を幅広く説明するように発展していきます。

太極図
私たちが住んでいる地球そのものはもとより、地球上のほとんどのものが陰と陽から成り立っています。
地球自体をみても、北極と南極という陰と陽に分かれていますし、生き物のほとんどが男と女すなわち、陰と陽に分かれています。(雌雄のわからないものも居ますけど)

他にも、表・明るい・硬い・火・夏・昼等は「陽」。
裏・暗い、柔らかい・水・冬・夜等は「陰」に。
また、前進・上方への運動・右旋・右への運動等が「陽」。
後退・下方への運動・左旋・左への運動は「陰」として捕らえます。
また、電極はプラスとマイナスといった具合に陰と陽に分別されて成り立っています。
ただし、陰陽説を理解する上で大切なことは、万物はそれが置かれている状況によって、陰であってもあるときは陽として現われ、陽であってもある時は陰となって現れるのだということです。
つまり、陽は陰を含み、陰は陽を含んでいるということであります。陰陽は絶対的なものではなく、時や場所によっては、反対のものへ転じることもあるのです。
例えば、真夏の太陽の下ではロウソクは「陰」の要素ですが、真冬の真夜中では「陽」の要素となります。
そして、陰と陽は、完全に相反する性質を持つが、元来が同一であるかのごとく、互いに従来しあいます。一方では、性質が異なるが故に、互いに引き合うことにもなります。
よって、物事を固定的に考えるのではなく、そのものの置かれている状況や特質をよく見極めることが重要です。
この関係を「陽中陰あり、陰中陽あり」といい、それを図で表したものが「太極図」です。
五行説は空間と時間の双方を表す概念です。

五行の「行」は、廻るという意味でとらえて下さい。
つまり、五行の五つの元素(木・火・土・金・水)が地球上全てのものを巡回させ存在するという考え方の上に成り立つ学説です。
太陽は「陽」として東。月は「陰」として西を正位置とし、星は中央となります。
地上には、五元素「木・火・土・金・水」五原色「青・赤・黄・白・黒」五季節「春・夏・土用・秋・冬」、北斗、南斗両星座の位置から、五方位「東・南・中央・西・北」が配されました。
これらが廻りながら相互に影響しあうことによって森羅万象が存在するという考え方です。
一週間の呼び名(月・火・水・木・金・土・日)はこの五元素に日月を加えたものだそうです。
そういえば太陽系の惑星も水・金・地・火・木・土で同じだということを不思議だと思ったことありませんか?
五行説では、それぞれの元素が、どのように廻り干渉していくのかの説明が不十分であり、これらを説明する理論が五行の相生説・相剋説です。

相生説は、五行が対立することなく、成長、発展していく様を説明する理論として生み出されたものです。

木が生長することによって始まり、木が擦れあい摩擦を生じることにより火が生じ、火が生じたことにより、木が燃え尽きて灰になり土を生じる。
土中には金、銀、銅等の鉄類を生じ、金気は水を生じる。
即ち、金ある所には結露し水が生まれるのです。
水が生じれば、水は全ての命の源であり、水の養分から再び木が生じる。
このように、幾度も輪廻していく中で全てのものが成長し発展していくという説です。

相生図
お互いの存在がお互いを生かすこれぞ共存共栄です!
相剋説は、五行同士がお互いに対立し、消滅していくことも自然の理であるとする理論です。

木は土中の栄養を奪い生長し、土は水の流れをせき止め、水は火を消火し、火は金を溶かし、金は木を切り倒す。
このように、幾度も輪廻していく中で全てのものを消滅関係にしていくという説です。

相剋図
たしかにそうですが、何だか悲しくなります。
陰陽道では、人類も森羅万象の中の一つに過ぎないということであり、大自然の輪廻の中で地球上の全てのものが生まれ、消滅していくと考える説です。
終わりは始まり…
次のステージに上がるためには、終わりが必要なのです!
それゆえに、人間も、この大自然の輪廻の中から生まれたものであり、人生にはこの五行(木・火・土・金・水)が深層心理に深く関わっており、人生と五行とは切り離せないものであります。
現代社会においても、このような大宇宙を含む大自然の輪廻の営みを根本に、どのようにすれば「利」を得られるかということを考えていく必要があります。
人それぞれの考えや、能力、得意、不得意等といった差があるとしても、それを分析し、全く相反するものの再統合などにより、一面は短所であったとしても、長所に対して絶大な支援要素である可能性も大いにあります。

即ち、短所を長所で補ったり、能力の発揮場所を選別したり、自覚していない能力を発揮する工夫をすることで全く違った展開が見える等、それらの関係を明らかにすることが「利」として影響するのです。
これらは、相の流れであり、なるべく「利」が集まるよう分析します。
その法則を明らかにしたものが、陰陽、五行、相生、相剋です。これらを統合したものが陰陽五行説となります。
長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
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